※この記事は、2018年7月号の「D-MARK MAGAZINE」に寄稿したものです。
日本国内は史上最悪の人材不足に陥っているらしい。オリンピックを控えて建設関係の人材が足りない、高齢化のため介護士が足りない、外国人観光客増加によって宿泊やレジャー施設で人が足りない、農家でも作業の担い手がいない、飲食店では厨房もホールもスタッフがいない。その他、さまざまな分野で「人が足りない」。更にはグローバル採用で外国人スタッフへのニーズが高まっている。タイ料理レストランはもちろん、街中でもたまに働いているタイ人を見かけることがあると思う。読者を含め、タイと関りを持つ我々には少しだけ身近な問題だ。
ところで、私はバンコクで留学エージェントを営み、タイから日本へ留学生を送り出している。タイからの留学生総数は目立った伸びはないが、近年の人材不足の影響もあり、この送り出したタイ人留学生を日本国内で採用しようとする企業の動きが年々活発になっている。日本語を身に着け、日本での生活に慣れている留学生は、企業にとっては貴重な人材なのだ。私は日々留学エージェントとして、学生たちに留学に対して目的意識を持ってもらいたいと常々思っていたので、「日本で就職」という機会が増えることは大変喜ばしい。我々日本留学エージェントも、「日本で就職」を良い形で推奨し、それを目的とした日本留学生を増やしていきたい。
余談だが、巷での留学エージェントのイメージはすこぶる悪い。一部に確実に悪質なエージェントがいることも確かである。悪質留学エージェントは、留学申請に必要な書類を偽造し、学生に借金させてまで法外な手数料を徴収、そして借金返済のためにアルバイトに明け暮れることになる学生を輩出する。現在日本全国で120万人いると言われている外国人労働者のうち、23%が留学生のアルバイトであり、その中の一部はこの悪質留学エージェントへの借金返済に追われてアルバイトも含まれる。皮肉なことに企業も彼らをあてにしているので、いなくなったら困る存在でもある。ちなみに弊社を含めた真面目な留学エージェントは、学生から一切手数料をいただかず、書類はしっかりとホンモノを揃え、やる気の程度の差はあれ勉強を目的としている人を送り出している。インターネットでの留学申込が少しずつ増えてはいるが、まだまだ大多数が悪質か真面目かどちらかの留学エージェント経由で外国人留学生は日本に行っているのだ。
そこでふと思った。
『これからの日本の人材不足を救うのは我々「日本留学エージェント」なのではないか?』
各国に点在している留学エージェントこそが、留学生の源であり、そこがどんな学生を集めるかによって、日本国内にいる学生の質も量も相当左右される力を持っているだけでなく、将来の日本国内の人材の質と量に大きな影響を及ぼす。そんな大事な立場なのに、悪徳留学エージェントを含め、我々日本留学エージェントはあまりにも頼りない。自戒の念を込めて、昨今のこの大きな役割を持っていることを自覚して、志を持って留学エージェントの役割を果たしていかねばならないと世界中の日本留学エージェントに向けて叫びたい。
ところで、我々留学エージェントが学生を送っている先は、日本国内の大学ではなく日本語学校がほとんどである。今の日本留学を支えているのは「日本語学校」なのだ。いわゆる「語学留学」をする先である。この日本語学校を束ねている「組織」がある。私はそこと連携し、留学エージェントの質の管理をしていくことを提案したい。「その組織が設ける基準を満たしていない留学エージェントは、その組織に属している日本語学校に留学生が送れない」とする。それだけで、良い学校に送りたい留学エージェントは学生の送り先を失う。条件を満たそうとすればめでたく真面目な留学エージェントとなっていることになる。この連携を図ることで、海外から日本への留学生の質は相当安定する。いま、ベトナムやネパールのように数万人単位まで留学生数が増加している国で特にこれらの質の向上が求められる。
当然だが国によって日本留学への人気の度合いは異なる。タイは比較的少ない。少ない=アルバイトで稼ぐ目的で日本留学する人が少ない、ともいえる。我々はどこの国でもこういう学生をターゲットとして留学生募集をすべきなのだ。そうすれば授業料が払えずに犯罪に走る学生などは生まれない。勘違いしがちなのが、放っておいても日本留学希望者はいる、という考えだ。コツコツとPR活動を続け、学生募集活動を続けるからこそ留学生は生まれる。そして、これからの人材不足を軽減するかもしれないタイ人が日本で活躍する。
PR活動のひとつが「日本留学フェア」だ。今年も日本留学フェアを含め、日本のさまざまな魅力を紹介する下記のイベントを開催する。日本から40の教育機関の参加を予定している。日本の魅力を大々的に発信すると共に、人生も日本に絡ませてもらい、日本留学や日本で就職を考えるキッカケになってほしい。
『バンコク日本博2018』
2018年8月31日(金)~9月2日(日)
サイアムパラゴン5階ロイヤルパラゴンホール
入場無料